2010年9月11日土曜日

小野田少尉 背筋の伸びた89歳


長崎県立大学シーボルト校で小野田寛郎さんの講演がありました。
演題は「人は一人では生きられない」というものでした。
フィリピンのジャングルで戦後30年間 一人で生き抜いて来られたという印象がある小野田少尉なので この演題に あれ? と思ったのですが、お話の導入部分でその疑問はとれました。
小野田さんが戦後フィリピンのジャングルに隠れた時は部下3人と一緒だったそうです。
4年後一人が逃亡し投降、その4年後に一人が戦死、最後の部下が戦死したのは小野田さんが投降する1年5ヶ月前のことだったそうです。
(戦争は終わっていたのですが小野田さん達は戦いを続けていたわけですから、戦死と表現されるわけですね。)
だから 小野田さんが一人で生きていたのは1年5ヶ月の間だけであったという事でした。
「人は一人では生きられない」
仲間がいたときは 病気になっても介護してくれるものが居る。しかしたった一人になると言うことは動けない病気や怪我はすなわち死を意味することだったそうです。
実際一人の部下が病気になった時、もう一人の部下が二昼夜かけて遠くまでパイナップルを調達に行き、その果汁で瀕死の友を救ったのだそうです。
また自分たちが生きるために調達した食べ物や衣服は、フィリピンの人たちが飼っていた家畜や、農作物、着ていた物などで、これもやはり現地の人たちの存在無くしては手に入らなかったものでした。
人は一人では生きられない。だから群れて生きているのだ。集団生活を継続するには人を思いやるやさしい気持ちが大切だ。思いやって行動するからこそ、相手からも思いやりが返ってくる。やさしさ、思いやりは行動で表さなくては本物ではない。そしてやさしく在るためには強くなくてはならない。
と小野田さんは説きます。

小野田さんが投降されたのが1974年。もう36年も前の事になります。
それなのに今回の講演の会場は入りきれないほどの人で、通路も人で溢れ、ついには小野田さんが立っていらっしゃる舞台の上にまで観客を座らせる措置がとられたほどでした。
今の社会に大きく欠けた何かを小野田さんの生き方から学ぼうと思った人が多かったのかもしれません。
89歳になられた小野田さんは1時間あまり立ったまま講演を続けられ、お顔こそにこやかな紳士のお顔でしたが、その姿勢は36年前にテレビで観た時とまったく同じ、背筋のまっすぐに伸びた兵士の姿でした。

「人は一人では生きて行けない」 という小野田さんの講演でしたが、小野田さんの姿から私が学んだことは、「人は先ずは生きる努力を自らしなければならない」ということでした。
物事の責務を人に依存しすぎている今の日本人!
自分のやるべき事を見失った今の日本人!
亡くなっていったあの頃の兵士は今の日本を見て嘆くだろう という小野田さんの言葉が胸に響きました。

私も背筋を伸ばして生きなければ。。。。。。

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